大判例

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長野簡易裁判所 昭和25年(ハ)4号 判決

原告 和田こう

被告 村上ときわ

一、主  文

被告は原告に対し金四百二十円及之に対する昭和二十五年二月十五日より完済に至る迄年五分の割合による金員を支拂うこと。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、その請求の原因として被告は昭和二十一年十二月十三日以來原告肩書居住家屋二階に同居して居るものであるが、原告及被告の使用する電灯料については、電灯会社よりは從來よりの居住者である原告名宛を以て、両世の毎月の使用料を合算した從量の電気料金の請求がある爲、昭和二十三年七月頃訴外竹内福太郎を介して両世の人員電灯個数等を勘案して、一ケ月の從量電気料を原告がその三分の一、被告がその三分の二を各負担することを約し、爾來昭和二十四年十月分迄は右約旨の通り支拂い來つたものであるが、同年十一月分同年十二月分昭和二十五年一月分については被告においてその負担額の支拂を爲さないので、原告は昭和二十四年十一月分從量電気料四十二キロワツト百九十七円中、被告負担額百三十一円三十銭を同年十二月十四日に、同年十二月分五十キロワツト二百十五円中、被告負担額百四十三円四十銭を同二十五年一月十四日に、同年一月分三十キロワツト二百十八円中、被告負担額百四十五円三十銭を同年二月十四日にそれぞれ立替支拂をしたので、被告の負担額右三ケ月分合計金四百二十円並に之に対する最後の立替支拂をした日の翌日である昭和二十五年二月十五日より完済に至る迄年五分の割合による損害金の支拂を求むる爲本訴に及んだものであると陳述した。<立証省略>

被告訴訟代理人は、原告の請求を棄却すとの判決を求め、答弁として原告主張事実中、被告が原告肩書居住家屋に原告主張の如く居住し居る事実は之を認む。被告方において從量電気料の支拂を爲さざる分は昭和二十五年一月二十七、八日頃原告と被告は電気從量器を各別に備付けたのであるが其の前二ケ月位のものと思う、その從量電気料について原告主張の日時頃訴外竹内福太郎を介して原告主張の如き割合を以て各負担額を約したことはあるが、それは訴外被告の夫村上康三郎と原告間において爲されたもので被告としては後日その様な約束をしたことを聞いたものであるから、被告は原告主張の如き電気料立替金の支拂義務者ではない、從つて被告に対して爲された本訴請求は失当であると述べた。<立証省略>

三、理  由

按ずるに、被告が昭和二十一年十二月十三日以來原告肩書居住家屋二階に居住し居ること、原告が被告方と訴外竹内福太郎を介して昭和二十三年七月頃毎月の從量電気料を原告方がその三分の一、被告方がその三分の二を各負担することを約したことは当事者間に爭がない。しかして証人竹内福太郎同村上康三郎の各証言及原告並被告本人訊問の結果によれば原告と訴外被告の夫村上康三郎とが訴外竹内福太郎を介して前記の如き負担額を約し、爾來両家とも其の約旨に基き右竹内福太郎にその電気料金の支拂を委託し昭和二十四年十月分迄は何等滯りなく支拂をなし來つたものであるが、同年十二月に至り被告において訴外三谷某なるものを同居せしめ同家土藏に住わせる関係上、同所に電灯を取付けることから原、被告間に紛爭を生じ、その結果被告は同年十一月、同年十二月、昭和二十五年一月の三ケ月分の自己の負担すべき電気料金の支拂を爲さないものであることを認めることができる。しかして成立に爭のない甲第二号証及証人竹内福太郎の証言並原告本人訊問の結果によれば、原告及被告両家の昭和二十四年十一月分の從量電気料は四十二キロワツト金百九十七円、同年十二月分は五十キロワツト金二百十五円、昭和二十五年一月分は三十キロワツト金二百十八円でありその中昭和二十四年十一月分の右電気料中被告方の負担すべき三分の二の額である金百三十一円三十銭は同年十二月十四日に、同年十二月分の金百四十三円四十銭は同二十五年一月十四日に、同年一月分の金百四十五円三十銭は同年二月十四日にそれぞれ原告において被告の爲立替支拂をなしたことを認めることができるのである。

そこで被告は原告と毎月の從量電気料負担額を約したのは被告の夫村上康三郎であるから、被告は原告主張の如き電気料立替金の支拂義務者ではないと主張するからこの点について考えて見る。

元來夫婦が共同生活を営むところにはそこに自ら共同の家事が発生する、ことにその日常の家事、即ち夫婦の共同生活関係から生ずる通常の事務例えば家族の食生活に必須な米、みそ、醤油などの買入、家賃光熱費等の支拂については、これを第三者からみれば、その取引は單に相手になつている夫または妻との取引ではなく、明らかに共通の家事として夫婦を共同の相手方とする取引である。しかして夫婦の一方が第三者となした法律行爲が、客観的に日常の家事に属することが認定されゝば、夫婦の一方が他方の行爲について責に任じない旨を第三者に予告した場合を除いて、夫婦は当然に連債務を負わなければならないことは、民法第七百六十一條に規定するところで、その行爲が夫婦のうちの誰の名でなされたか、または共同の名でなされたか、或いは夫婦の一方のみが收入を得て他方はその收入によつて生活をしているとかいうが如きは問うところでない。既に夫婦が連債務を負うことになれば、債権者は当然夫婦の中一人に対しその債務の履行を求めることができることは謂うを俟たないところで、本件從量電気料が右に説示したところにより日常の家事に関して生じた債務であることは明らかであるから、被告の夫は勿論、被告も亦別個独立にその債務を負担するものといわなければならない。のみならず成立に爭のない甲第一号証及証人竹内福太郎の証言、原告並被告本人訊問の結果によれば被告の夫村上康三郎は既に昭和二十三年六月十四日東京都へ轉出して時折妻子の許へ帰るに過ぎず、その後は被告が專ら世主として家事一切を担当していることが認められるから、被告は右電気料の支拂を爲すべき責任を負わなければならないこと勿論である。よつて此点に関する被告の主張は採用しない。

以上の理由により被告は原告が被告の爲立替支拂を爲した前記從量電気料金合計金四百二十円及之に対する昭和二十五年二月十五日より完済に致る迄年五分の割合による損害金の支拂義務があるものと謂うべきであるから之が支拂を求むる原告の本訴請求を正当として之を認容し訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 深沢利一)

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